「夏目漱石の作品を読んでみたいけど、どれから読めばいいかわからない……」
「昔の小説だから内容が難しそう……」
そんな方のために初心者向けの作品を3つに絞ってご紹介します。
ズバリ初心者におすすめの3冊は「三四郎」「坊っちゃん」「こころ」です。
今回はそれらのあらすじも交えて解説していきます。
夏目漱石ってどんな人物?
明治から大正にかけて活躍した日本を代表する文豪。「吾輩は猫である」「こころ」等、数多くの名作を世に生み出しました。
小説家になる前の漱石は、帝国大学(現在の東京大学)を卒業後、英語教師として働いていました。さらに文部省からの命令でイギリスに2年間留学をしたことも。今でいうところのエリートだったんですね。
一方で漱石はメンタルを病みやすかったり、超がつくほどの甘党だったりと、あまり知られていない一面もあります。イギリス留学時代には不慣れな異国での生活にメンタルを病み、いちごジャムにどハマり。1ヶ月に8缶を平らげていたという逸話もあります。なんだか急に親しみが湧いてきませんか?
そんな愛すべき文豪・夏目漱石の初心者向け代表作3選、ぜひ読んでみてください。
まずはこの3冊!初心者におすすめの代表作
三四郎
熊本から大学進学のため上京してきた三四郎。東京へ向かう汽車で知り合った女性と同じ部屋で泊まることになったり、大学で初めて出来た友人に振り回されたりと、都会の洗礼を受けまくる。
東京での生活にも徐々に慣れ、大学の講義にも飽き始めていた三四郎は、美禰子という女性に出会う。自由奔放でミステリアスな雰囲気漂う彼女に恋心を抱くも、奥手な三四郎は一方的に翻弄されるばかり……。果たして三四郎の恋は無事に実るのか。
この作品を一言で表すなら「東京青春ラブコメ」です。めちゃくちゃ現代的ですね。三枚目キャラの友人がいたり、ハーレム要素があったりと、「三四郎」は明治時代のラノベと言えるでしょう。
近代文学を難しいと感じる理由のひとつに、物語のテーマが難解で共感できない、という点が挙げられます。「三四郎」は現代人にとってかなりとっつきやすいテーマであること間違いなしです。
三四郎は最初こそやる気満々で大学に入学しますが、「なんか思ってたのと違う」と次第にやる気を失って講義もサボり始めます。そんなところも現代人の感覚に通じていて共感しやすいポイントです。
明治時代の東京に生きる草食系男子・三四郎の青春物語をぜひ追体験してみてください!
坊っちゃん
正義感こそ強いものの、負けん気が強く無鉄砲で、家族から呆れられていた主人公(坊っちゃん)。しかし下女の清だけは彼のことを「坊っちゃん」と呼び、幼い頃から優しく接してくれていた。
やがて坊っちゃんは地元・東京を離れ、四国で教師として働くことに。個性豊かな教師たちやイタズラ好きな生徒たちに囲まれ、困惑する日々を送る。
そんなある日、教頭の不祥事を知った坊っちゃん。それまで幾度となく教頭からひどい扱いを受けていた坊っちゃんは、同僚と協力して彼をこらしめる決意をする。
この作品をおすすめする理由として、まず他の漱石作品と比較して文章量が少ないということが挙げられます。読書経験の少ない方でも1日あれば十分読み切れる量です。また比較的簡単な表現が多く、近代文学を読む練習としても最適です。
そして内容に関して親しみやすい点が、坊っちゃんが他の教師たちにつけるあだ名です。いつも赤いシャツを着ている教頭は「赤シャツ」。赤シャツに媚を売る(太鼓持ち)美術教師には「野だいこ」。校長に対しては見た目が似ているという理由だけで「狸」と名付ける始末です。(ちなみに坊っちゃん自身、生徒から「天ぷら先生」というあだ名をつけられています。)
これらのあだ名が作品全体に軽やかな印象を与え、読んでいて苦になりません。以上の理由から、普段あまり本を読まないという方にもおすすめの一冊です!
こころ
鎌倉の海で「先生」と知り合った主人公「私」は、どこか暗い影を感じさせる彼に次第に惹かれていく。先生が口にする意味深な言葉の数々。次第に私は先生のことをもっと知りたいと思うようになるが、先生は簡単には心を開こうとしなかった。
大学を卒業し、地元に帰省していた私のもとに先生から一通の手紙が届く。それは先生が私に隠し通していた過去の告白であった。手紙には先生のかつての友人「K」と現在の妻にあたる「お嬢さん」をめぐる、悲痛で凄惨な記憶が綴られていた。
暗いです。「三四郎」や「坊っちゃん」にあった爽やかさや暖かさは一切ありません。これら2冊は最初期に書かれたものですが、「こころ」は後期の作品です。この作品は一般的に「エゴイズム」がテーマだとされており、人間の醜さをありありと表現しています。
とっつきづらいと感じたかもしれませんが、意外にも他の漱石作品に比べて「こころ」の文章は読みやすいです。ストーリーも比較的理解しやすく、初心者の方でも十分楽しめます。
そしてこの作品には名言が溢れています。今回はなかでも特に鮮烈な名言を1つご紹介します。
それでも私はついに私を忘れることができませんでした。
夏目漱石「こころ」(角川文庫)より
「先生」が手紙による告白の中で語った言葉です。人間のエゴを詩的かつ残酷なほど直球に表しています。普段こそ誰も自分のことを欲まみれの利己主義者だなんて思って暮らしていないでしょう。しかし金や愛をめぐる土壇場で果たして私は善人でいられるのか……
夏目漱石の言葉は時代を超え、現代人の心に刺さります。 ぜひ彼の言葉をご自分で体感してみてください!
まとめ
いかがでしたでしょうか。まずはこの記事で紹介した3冊の中で気になったものを手に取っていただければ嬉しいです。どれも名作と呼ぶにふさわしい作品ですので、きっとあなたの人生をより豊かなものにしてくれるはずです。
ちなみに夏目漱石の作品はすでに著作権が消失しているため(パブリックドメイン)、青空文庫というサイトで無料で読むことが可能です。
青空文庫〜夏目漱石作品一覧
ただ個人的には角川文庫のかまわぬコラボカバーがおすすめです。和風テイストの装丁がおしゃれで手触りもよく、紙媒体ならではの良さが活きています。興味がある方はぜひ書店で実際に手に取って確かめてみてください!
角川文庫〜かまわぬコラボカバー一覧
それではまた。
コメント